Book(編集):新津保建秀写真集“\風景”

2007年春、都内近郊のある土地を訪れた新津保は、その翌年、乙一の小説『GOTH/モリノヨル』(角川書店)のための写真を撮り下ろしたことをきっかけに、その磁場に引き寄せられるように、継続的に撮影を行ってきました。今作はそれ以降に制作した、不可視の情報空間を流動する膨大な情報の流れを抽象化した作品「Binaural-Scape」(2008-2009年)、相対性理論+渋谷慶一郎のトリプルシングル「アワーミュージック」(commmons)のアートワークのための写真(2009年秋)、雑誌「FREECELL」(角川書店)に発表された地図とデスクトップ上のキャプチャー画像によるシリーズ(2010年初夏)、同誌のためにやくしまるえつこのポートレートとともに撮影された風景写真(2010年晩夏)、そして東京大学知の構造化センターpingpongプロジェクトの岡瑞起、橋本康弘による地図画像とのコラボレーション作品などによって構成されます。

今作はこれまで断片的に発表してきた写真と新作を統合し、風景について新しい解釈をなげかけるものです。新津保は、風景とは、その空間の現在のありようと、その場における人の営みの痕跡が堆積したものとの総体であると捉え、その場に内在する人の行為の集積によって生成されたレイヤーを写しとろうとします。ここでは、私たちをとりまく環境における光学的に記録が可能な風景と、情報空間上の膨大なデータの流動が異なる主体の行為と繋がることによって生成される非光学的な風景が対象となっています。そこに写っているのは、さまざまな風景写真とともに、情報工学的に生成された地図や、デスクトップ上に展開された極めて個人的な視線の集積によるアーカイブなどであり、堆積する記憶はネットワーク上の不可視の視線と連なっていきます。またタイトルのバックスラッシュには、プログラムにおいて後に続く概念を無化する働きがあり、『\風景』はさまざまな「境域」を改めて「風景」として捉え直した、近年の作業の集大成となる写真集です。

タイトル:\風景
著者:新津保建秀
デザイン:田中良治(セミトランスペアレント・デザイン)
定価:4935円(本体4700円)
ISBN978-4-04-110194-0
判型:A4ヨコサイズ
108ページ/ハードカバー
発行:角川書店
発売:角川グループパブリッシング
2012年4月10日発売

 

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